ラディカルフェミニズム radical feminism
ケイト・ミレット Kate Millett
性の政治学
リベラリズム liberalismの前提となっている公/私二分論的な思考を批判
私的領域である家の不可侵性という論理は家長の暴力的な支配の肯定
私的なものは政治的である The personal is political
公/私を改めて政治の上にのせる
70年代(中絶権などが問題となっていた時期)はそれほどリベラル・フェミニズム liberal feminismとの差異は際立ってなかった
その後差異の政治の性格が強まり違いが際立っていく
ポストモダン postmodernの影響を強く受けたラディカル・フェミニズムの議論の多くは、近代市民社会の中での女性のアイデンティティ形成や「表層 representation」のされ方を、記号学 semiology、言説分析、精神分析 psychoanalysis、文化人類学などの知見を動員しながら脱構築的に ── つまり、どういう結論に収束していくのか分からないような文体・論理展開で ── 分析する。そうした議論に慣れていない者にとっては、社会の根深いところにある“〝 男性(男根)中心主義”〟 が問題にされていることが分かるくらいで、具体的に何が求められているのかピンと来にくい。
文学畑のラディカル・フェミニストの中には、弱者や女性がこれまで政治的自己主張のため用いてきた「権利」や「正義」といった概念自体が、男性中心主義的な市民社会の産物であり、その言語を使うこと自体が男性の論理に 搦め取られてしまうことであると見なし、「権利」「正義」「平等」「自由」などの法的言語を使って「差異の政治」を展開することを拒絶する者も少なくない。
そのため「権利」や「正義」などの基本概念を、市民社会の現実に合わせて厳密に定式化することによって、“〝 正義”〟 を実質化させていこうとする「リベラリズム」の哲学と、ラディカル・フェミニズムの間では議論のレベルが嚙み合わず、お互いに違う世界の住民であるかのように接点がないことが多い。
バトラー Judith P. Butler